事業“昇慶”第三の要諦は、「引き継ぐものを明確にする」ことです。今回は、信用と理念の具体的な形としての経営者個人に帰属する財産である『人脈』と正負両面の『資産』について考えてみましょう。
ここで言う『人脈』とは、重要なお客様や業者様については言わずもがなですが、それ以外に、経営者であるからこそ縁を結ぶことができた同業経営者、異業種経営者、先生(師)と呼べる方々や、趣味や地域コミュニティー、政治関係、公共機関、公益団体などを通じて知り得た信頼のおける方々を指します。それらの方々の内、会社の将来や後継者を鑑みて、承継後もお世話になりたい方については、きちんと引き継いでいかなければなりません。その際、単なる利害関係のみならず、後継者の指導役や後見人といった視点が大切です。
そのような方々に対しては、ただ顔つなぎをして「後はお前の人間力で」と突き放すのではなく、後継者との好ましい関係が構築できるまでフォローしていくことが肝要です。この人脈継承の充実度が、譲った後の安心感醸成の一助となるものです。
後継者にとっては多少やりにくさがあるかもしれません。しかし後継者には「今の自分にはその大切さはわからない」「いずれわかる時が来る」ことを肝に銘じ、その人脈を守り育てていく心構えが必要です。
『資産』については正負両面があり、正の資産、特に事業の用に供している個人資産は、きちんと後継者に引き継がせるような手続を踏むことが必要です。これを間違うと、相続発生時に可愛い子供達に禍根を残すことになります。
負の資産、即ち負債については、直近の貸借対照表を時価換算し、真の負債はいくらか、今だったらどれほどの負債を後継者に背負わせることになるのかを明確にした上で、後継時までにどのようなバランスにするか、その目標を明確にし、事前に手を打っていくのは、譲る者の責務です。その負債があるからこそ今の発展があったのですから、ゼロにする必要はありません。要するに譲るもの(正の資産)とのバランスにおいて、適切な負債額にしておくことが肝要です。
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